トップメッセージ
自動車の電動化に向け、世界が動いています。排ガス用触媒で実績と信頼を積み上げてきたキャタラーは、次の時代にどう成長していくのでしょうか。燃料電池触媒の研究開発を続けてきた先進材料開発部・寺田部長と、炭素材開発を担う2人の技術者に話を聞きました。
――自動車用排ガス触媒を主力製品とするキャタラーの今後はどうなりますか?
寺田
現在、四輪用触媒のシェアが世界4位、国内ではトップです。キャタラーが持つ実力を十分に活かして世界3位以上を目指すため、研究開発本部などの体制づくりをしています。
浅倉
これからも排ガス触媒には需要があります。それに加え、キャタラーには次世代のアイテムがあります。燃料電池の触媒や、キャパシタ(蓄電池)用リチウムイオン電池用炭素材などです。
吉村
自動車の需要が増えると予想される新興国では排ガス触媒の伸びも期待できます。
――キャタラーが持つ炭素材の技術は、どのように活かせますか。
浅倉
電池などに使われる炭素材には、過酷な条件で使えることが求められます。その要求に応えるためには、不純物の少ない高品質なカーボンや、劣化しにくいカーボンの開発を続けていく必要があると思います。
吉村
キャタラーには、自動車分野で培った触媒技術と活性炭の吸着技術を活かした環境ケミカル製品があります。空気清浄や脱臭などに使える製品です。先進国ではもちろん、これから生活水準が上がってくる国のニーズをつかめれば、ビジネスとして大きく発展できます。
寺田
自動車の座席に使い、車内の臭いを取る活性炭シートも、当社の新しい製品として期待されています。電車やバスなどの公共交通機関に使われるようになれば、市場が一気に開けますね。
――市販の空気清浄機にもキャタラーの環境ケミカル製品が使われていますね。
吉村
日本の空気清浄機の5割以上に採用されています。家電メーカー向けの開発では大切なのは、スピード感ですね。製品開発のサイクルが短いため、私たちにも素早い対応が求められます。
また、家電メーカーのニーズを先読みし、生活臭の除去について研究するなど、着眼点が評価につながりやすいのも特徴です。
――キャタラーで働く人材には、どのような特徴がありますか?
浅倉
活力のある社員が多く、動き出すのが早いですね。会議で問題提起をすると、その場でアクションが決まってしまうほどです。
寺田
お客様からメールが来ても、即レスですね。
吉村
お客様と研究者の距離が近いというのも理由でしょう。研究開発に役立つ情報をお客様からいただくこともあります。
寺田
技術者というと、会社の中でコツコツ働くイメージが強いと思いますが、当社では外に出る機会が多いですね。そこでお客様の信頼を得ると、情報が集まってくるようになります。
――若手でも大きな仕事を任されるそうですね。
浅倉
私は入社2年目で学会発表をさせていただきました。研究テーマは、キャパシタ用炭素材でした。もともとこの分野に関心があることを上司に伝えてあったところ、あるとき「例の仕事が来たから、やってみるか?」とチャンスをもらいました。
研究では、ある性能が上がるメカニズムをしっかりと考え、選択肢を地道に潰していきました。その結果、お客様が評価したさまざまな炭素材の中で、私が開発したものがトップの性能を示したと聞き、本当にうれしく思いました。
寺田
若い社員が活躍する場はいくらでもあります。研究テーマも豊富です。
私も社歴が浅いときに、やりがいのある仕事を任せてもらいました。私は2000年に中途入社し、2002年には小泉純一郎・元首相がデモンストレーションで乗った燃料電池車の触媒をつくりました。燃料電池の開発はまだまだこれからという時代だったので、世界中の特許に目を通し、多くの情報を集めて臨みました。キャタラーには排ガス触媒の技術と炭素の技術があったため、それらがベースとなり、開発しやすかったですね。
――技術者の成長をどのようにサポートしていますか?
寺田
その人の得意なところを伸ばす方針で育てています。できるだけ会社が指示するのではなく、本人が成長の必要性を感じて学んでもらう方がいいですね。
教育システムが確立されているので、やる気のある人は総合的な技術力を伸ばすこともできます。
浅倉
私は解析能力が自分の強みだと思っているので、さらに伸ばしたいと考えています。
私は理学部出身で、サイエンティフィックに深掘りすることを重視していたのですが、深掘りばかりでは仕事が進まないと実感しました。そこで、統計的な手法を学び、大きなデータを効率よく解析する力を蓄えたいと思います。
外部のセミナーに行きたいと希望すれば、行かせてもらえる会社なので、その環境も活かしたいと思います。
吉村
皆さんは、仕事と私生活をどうやって切り替えていますか? 家に帰ってから仕事のことを思い出したりしませんか?
浅倉
思い出します。研究開発をやっていると、プライベートな時間でも「そう言えば、あれって何故なんだろう?」という疑問が頭に浮かびます。それをきっかけに問題が解決することもあります。どうしても切り替えたいとき、私は遠くに旅行に行きます。会社の風力発電の風車が見えると、研究を思い出してしまうので。
寺田
家に帰っても研究のことを考えてしまうというのは、私にもあることです。切り替えるためには、趣味などがあるといいですね。
浅倉
吉村さんは子育てをされていますが、家庭と研究開発のバランスはどうされていますか?
吉村
実は、私は子どもを育てるときには親の助けが不可欠と考え地元にある、キャタラーを選びました。今は親に助けてもらいながら双子を育て、研究開発も何とか進めています。
学生の皆さんに知ってほしいのは、会社を選ぶときには、子育ての視点も重要ということです。縁もゆかりもない土地で、親や親戚のサポートなしで子育てをするのは、大変だからです。
――産休・育休後の復帰はどうでしたか?
吉村
産休前に担当していた仕事に戻れたため、すぐに慣れることができました。むしろ、以前よりも効率的に仕事を進められるようになりました。当時は子どもを自分で保育園に迎えに行っていたので、午後5時には会社を出なければならず、仕事にかけられる時間に限りがあったためです。
――燃料電池が注目されてから、まだ年月が経っていません。
寺田
私はずっと燃料電池を研究してきました。最近まで、燃料電池は注目されず「この研究が、いつか日の目を見ることになるんだ」と思いながらやってきました。
吉村
私の場合は炭素材などの研究をしてきましたが、自分が関わってきた技術が注目されるのは、やはりうれしいですね。これまでも空気清浄機向けなどで当社の製品が広く使われていたので、やりがいは大きかったのですが、注目が高まるとさらに頑張ろうという気持ちになりますね。
また、車向けの活性炭シートが軌道に乗れば、自動車の内装品にまで関わる企業になりますね。
寺田
トヨタグループの中で、そこまでできるのはキャタラーだけですね。
――自動車の電動化について、技術者としてどう思いますか?
寺田
いよいよ、私たちキャタラーの時代が来ますね。例えば、燃料に水素を使う燃料電池車が普及すれば、当社が開発した燃料電池触媒の需要が増えることになります。また、現在の燃料電池車は、燃料電池のパワーを補うため、二次電池を積んでいます。二次電池として使われるリチウムイオン電池等の負極には、炭素材が使われています。
言うまでもなく、ハイブリッド車・プラグインハイブリッド車の場合、エンジンと電池が搭載されているため、当社の排ガス触媒と炭素材をアピールできます。
自動車用触媒メーカーの中で、炭素材の技術を持つ企業は、キャタラーのほかにありません。
浅倉
燃料電池車、電気自動車、ハイブリッド車などには、共通技術も多いですね。
寺田
電動化に向かう道は1つではなく、さまざまなルートが考えられるのですが、キャタラーはどのルートであっても、最適なシステムづくりに貢献できます。時代の流れに柔軟に対応し、技術の進歩に多角的に追随する能力があるというわけです。
浅倉
電動化社会に向け、燃料電池などさまざまなデバイスに関わる必要があります。そのために、人やモノなどの限られたリソースを効率的に活用しなければなりません。そこで、ビッグデータや機械学習を活用が重要になると思います。
寺田
たしかに、開発すべきデバイスの多様化に加え、グローバル展開も進む中で、効率性は大事ですね。機械学習などの新しい技術の活用については、検証を始めています。
浅倉
これまでの研究をデータベース化し、人工知能を活用すれば、私たちにとって新しい視点を与えてくれる可能性があります。そのようなツールを使って、これまでとは別の次元で物事を見たいと思います。あとは、単純に楽をしたいというのもありますね。
寺田
重要なことですね。自由な時間がなければ、新しい発想が生まれませんから。
吉村
もう少し夢を膨らませると、キャタラーの技術は宇宙で使われる可能性もあります。例えば、宇宙ステーションでは、空気を浄化する技術が必須です。
浅倉
宇宙では燃料電池も使われています。
寺田
今までは地球環境をキレイにすると言っていましたが、これからは宇宙をキレイにするというわけですね。
浅倉
大学や大学院で研究してきた年数に比べると、会社に入ってからの年数の方が当然長くなります。だから、学生時代の研究以外の分野に興味が芽生えたなら、就職を機に新しい世界へ飛び込んでもいいと思います。それまでにやってきたことはどこかで役立つので、自信を持って次のステージに進めばよいのではないでしょうか。
吉村
私はこれまでに、空気清浄機向けの製品や、水を浄化するための触媒など、多くの製品の開発に取り組んできました。振り返ると、キャタラーはさまざまなテーマに挑戦させてもらえる会社であるとあらためて思います。
中には、自分が苦手だったり、興味がなかったりするテーマもあるかもしれませんが、そこをチャンスととらえ、視野を広げられれば、より一層楽しく働けるでしょう。
寺田
キャタラーは、分野を問わず、やる気があれば何でもできる会社です。研究開発部門は磐田市に構える「キャタラーARK(Advance Research Knowledge)クリエーションセンター」へ移り、より充実した環境で研究に臨めます。ARKを技術情報の発信基地とするためにも、若い人の力が必要です。ぜひ、一緒に働きましょう。
この度、座談会の協力をいただいたお店は、キャタラーから車で約10 分に位置する居酒屋『一心』さんです。
メインストリートから1本入ったところにある立地と、店内の雰囲気がとてもマッチする隠れ家的なお店。魚屋さんを経営されていることもあり、マグロの皮など珍しい部位も料理で提供されます。魚料理をはじめ、すべての食材が丁寧に料理されています。冬場に食べられる白子やあん肝は絶品ですので、是非ご賞味ください。
※掲載している内容はインタビュー当時のものであり、現在の状況とは異なっている場合があります。