トップメッセージ
坂神
クルマはガソリンを燃焼させることで動力を生みますが、燃焼させるにはクルマの外の空気を取り込む必要があります。
今の触媒技術では、エンジンから排出されるガスの有害物質を99%以上、浄化することが可能であり、信じ難いかもしれませんが地域によっては空気よりも排ガスの方がきれいということがあり得るのです。世界的な環境意識の高まりを受け、触媒に求められる役割は「有害なガスを排出させない」ことから「空気をきれいにする」ことに変わってきています。
平井
世界的な潮流としては、日米欧をはじめとする先進諸国においては非常に厳しい排ガス規制が導入されており、新興国においてもその基準を追随する流れにあります。
触媒が進化し続けることで、世界中の人々により環境に貢献する乗り物を届けることができるのです。キャタラーは自動車産業に不可欠な存在であり、世界中のクルマに我々の製品を供給することで地球の環境を守り、“触媒で地球とクルマをつなぐ”という使命を負っています。
坂神
ハイブリッドカー(HV)が普及するにつれ、触媒に対する期待も高まっています。HV車は電気走行時にはエンジンを使用しないため、その間エンジン温度が下がってしまいますが、ここに大きな問題があります。触媒は低温状態では有害物質を浄化しにくいため、各自動車メーカーから、より低温で活性化する触媒の開発が求められています。
また触媒や活性炭で培った技術を応用し、現在注目を集めている燃料電池車(FCV)の心臓部である電極触媒を供給するなど、次世代に向けた技術開発も進めており、自動車メーカーからの期待も高まっています。
さらに、国によってはエンジン搭載車においても燃料がガソリンからエタノール燃料やバイオ燃料などに多様化していく動きもあるため、法規に適合できるような製品の開発が求められているなど、取り組むべき課題=“チャンス”は山ほどあります。
坂神
キャタラーは、親会社であるトヨタ自動車殿と連携をとることによって、高い研究・開発力を持つことができており、製品品質においては世界トップレベルを誇っています。触媒は、1グラム数千円から数万円という高額な貴金属を材料として使用していますので、生産コストを抑えるために、より少ない材料で性能を満たすことが求められています。
また、この貴金属の低減そのものがレアメタルなどの貴重な資源を守ることにつながっています。
実績として、この10年間で貴金属使用量を7割以上も低減することができましたが、これは触媒成分を熟知し、最適な製造技術を確立するという、材料の基礎研究から製品開発、生産技術まで一貫した開発体制があるからこその強みと言えます。
平井
今後は、世界シェアを高め、当社の触媒技術をより多くの自動車メーカーに提供できるよう、グローバルでの供給体制を強化していきます。
現在は、アジアに5拠点、北米、アフリカに各1拠点で世界をカバーしていますが、例えば欧州・南米にも生産拠点を置くことで、よりタイムリーに、高品質・低コストな触媒を提供することが可能になります。まだまだ広がり続けていく市場に進出することでグローバルな供給体制の実現を目指します。
平井
海外で仕事をするということは、「日本人」としてではなく「国際人」としての活躍が期待されます。
異文化・言語を理解し、現地スタッフと一緒に仕事を進められることが前提となり、また業務範囲も幅広いため、高いリーダーシップが必要であると考えています。いち早くグローバル感覚を身につけてもらうためにも、20代の若手社員時代から出張ベースで海外での仕事を経験させることで、世界で勝ち抜いていける人材を育成したいと思っています。
坂神
技術職においては、研究開発・製品設計・生産技術のそれぞれの領域でプロフェッショナルな人材を育てていきたいと思っています。
触媒は必要な要素技術が数多くあり、約3万点もある自動車部品の中でも開発が難しい部品のひとつとされています。
材料研究はもちろんのこと、生産技術においても微細な空間に貴金属を塗布する技術をより高めていく必要があります。そのためには解析や評価の精度を向上させるとともに、どのような設備でどのように製造するのかというノウハウを高めていかなければなりません。触媒という、たったひとつの製品ですが、興味の持てる分野は幅広く存在しています。
※掲載している内容はインタビュー当時のものであり、現在の状況とは異なっている場合があります。