研究開発本部の開発部門が設計した製品の作り方を考え、試し、安全・品質・生産性が基準に達していることを確認してから製造本部へ引き渡すのが、私たちの仕事です。生産準備と言われる業務です。
第2生産技術部の仕事は大きく分けて3つあります。
1つ目は、二輪・小型エンジン用触媒に使われるハニカム状のメタル基材の製作について生産準備を担当するメタルグループ。私はこのグループに所属しています。
2つ目は、そのメタル基材の触媒化(コーティング)の生産準備を担う触媒グループ。
3つ目は、活性炭の生産準備を進める環境ケミカルグループです。
メタルグループの具体的な仕事の進め方は、次のようなものです。
まず、開発部門が決めた製品の仕様に基づき、生産工程を考えます(工程設計)。その中で、新しい生産設備や技術が必要かどうかを検討します。新規設備が必要なら、開発します(設備設計)。続いて、設備のマッチング、チューニングを施し、量産トライアルを行います。量産トライアルでは、不良品を出すことなく製品をつくり続けるための良品条件を見つけていきます。
生産技術本部 第2生産技術部
大石 正和
新規設備の開発は、私が特に面白いと感じる仕事の1つです。
例えば、メタル基材に塗布したろう材を新しい方法で乾燥させるための設備の開発に携わったことがあります。
従来の乾燥方法では、数百個のメタル基材を同時に熱によって乾燥させていました。ところが、研究の結果、ろう材塗布後に従来より素早く乾燥させると、より高い強度が出せることがわかりました。乾燥の熱によって粘度が下ったろう材が垂れてしまい、固着してほしいところに着かなかったり、偏ってしまったりすることを防げるからです。
そこで、新しい設備では、ろう材を塗布した直後に、その場で台風並みの風を蜂の巣状のメタル基材に通し、水分を飛ばすようにしました。当社にとってはまったく新しい生産設備であるため、設計からトライアルまでを通して、やりがいを感じました。
生産準備を担当する私たちは、開発部門による製品企画にも関わり、スムーズに量産へとつなげるための助言をします。同時に、生産設備についても検討を開始します。このように、研究開発段階で、生技も参画し工法開発を同時並列で進める手法はコンカレント・エンジニアリングと呼ばれ製品の性能向上につながることもあります。
1つ例を挙げます。メタル基材のハニカム構造を固定するろう材は、全体に塗布した場合よりも、部分的に塗布した方が耐久性が上がることが、わかってきた時期のことです。
全体をガチガチに固めてしまうより、ある程度フリーの部分があった方が熱膨張による負荷が少ないため、耐久性が向上します。筒状のメタル基材を立てて置いたとき、下半分だけに塗布するようなイメージです。
そこで、設計部門には、ろう材を塗布する部分としない部分(塗布幅)の基準や、許容される誤差の範囲について実験を進めてもらいました。私たちは、塗布幅の安定化技術の検討を並行して進め、製品化にこぎつけることができました。
生産技術本部は、海外出張が多い部署でもあります。
私もインドネシアやインドで二輪用触媒の工場立ち上げを経験しました。1回の出張期間は長く、現地の方たちと力を合わせて生産準備を進めていきました。異国の文化、考え方がわかるようになるなど、貴重な体験ができました。海外で働きたいと考えている技術者志望の方には、打ってつけの仕事ではないでしょうか。
また、触媒の世界では、新しい技術の流れが次から次へと生まれます。例えば、私が関わる二輪用触媒では、メタル基材の新しい構造が注目されています。排気ガスの流れ方を改良し、表面にコーティングされた触媒を有効に使える構造です。こういった新しい製品を製造するための新規装置の開発では、多くの挑戦と失敗があり、ものづくりの醍醐味を味わえます。それに加えて、1人ひとりの努力によって幅広い知識を身につけると共に、様々な部署とコミュニケーションを取れるようになれば、仕事の面白さがさらに増していくものです。
※掲載している内容はインタビュー当時のものであり、現在の状況とは異なっている場合があります。