欧州自動車メーカーへの拡販活動を行っている欧州事務所。ドイツに本社を置く自動車メーカーとの大型ビジネスが始まったことを契機に、駐在スタッフの強化に着手しました。技術スタッフと営業スタッフが一体となり、新規取引の獲得を目指すほか、既存顧客との関係強化を図り、継続的な受注を実現しています。
欧州事務所の仕事の進め方について、話を聞きました。
――欧州事務所は、どのような事務所ですか。
山田
ドイツ・デュッセルドルフ市にあり、営業と技術のバックグラウンドを持った社員が駐在しています。事務所のメインの業務は、欧州の自動車メーカーとの関係を構築し、排ガス浄化触媒の新規受注を実現することです。また、触媒をめぐる状況を知るための市場調査、技術調査を行います。
――欧州事務所の機能を強化した経緯を教えてください。
山田
2000年ごろから欧州の自動車メーカーに対し、拡販活動を行ってきました。しかし、世界的な不況もあって具体的なビジネスに結びつけることが難しく、欧州事務所に専任の駐在員がいない時期もありました。
そのような状況の中、2014年から2015年にかけ、ドイツに本社のある自動車メーカーから大きなビジネスを獲得できる見込みとなったため、欧州事務所を本格的に再開することになりました。現在は、他メーカーとの取引獲得も積極的に目指し、人員を強化しているところです。
――駐在員の方たちは、具体的にどのような働き方をしていますか?
山田
私は週の半分以上は事務所にいます。時差の関係で、キャタラー本社とのやり取りは午前中に行うことが多くなっています。当社のお客様はドイツを含めて欧州各地にあるため、各国へ出張することもあります。最近では、東欧や北欧各国を訪れています。
鈴木
私は本社で10数年、研究開発を行い、2017年4月に欧州事務所へ着任しました。私の仕事の内容としては、新たにビジネスを開始したい自動車メーカーを訪問したり、学会へ参加したりして情報を取り、日本の本社へ流すことが主になっています。
――新規のお客様との関係構築は、どのように進めているのですか。
山田
私たちの動きの基本になるのは、新しい排ガス規制です。新しい規制に対し、各自動車メーカーがどのような課題を持っているのかをつかむところから、スタートします。自動車メーカーとの最初のコンタクトは、学会であったり、紹介であったり、さまざまです。
自動車メーカーの担当者から「こんなことで困っているんだ」という話を聞き、課題が分かったら、本社の開発部門にフィードバックします。そして、私たちがどのような技術的アプローチができ、どのように解決できるのかを徹底的に練ります。その結果を自動車メーカーに提案し、反応を持ち帰ってさらに競争力のある提案を探る。その繰り返しです。
――お客様に対する営業活動で、心がけていることは何ですか。
山田
ドイツでは、お客様からシビアな要求をいただくこともしばしばです。
しかし、ドイツ人も結局、人間を見ているというのが、私の経験で分かったことです。人間を気に入ってもらえると、新しい情報をすぐにもらえるようになったり、会ってくれる回数が増えたり、電話にすぐに出てくれるようになったりと、変化がはっきりと現れます。
このような人間関係の構築は、キャタラーの触媒を評価していただくことと同じくらい大事なことです。
ドイツ人はストレートに、正直にモノを言ってくれる印象があります。それに対し、私たちも言うべきことをストレートにお伝えすることが、信頼を獲得するカギだと思っています。
日本では、個人の考えに立ち入った雑談はしないのが一般的です。しかし、私はドイツでは、宗教に関心が高い方には宗教の話をしますし、政治が好きな方には政治の話をしています。
――欧州事務所のこれからの課題を教えてください。
山田
30年、40年、そして半世紀後に、自動車のエンジンはどうなっているのか。触媒に要求される機能はどう変わるのか。これらの極めて重要な情報の端緒は、環境規制が進んでいる欧州でこそ、つかむことができます。私たちはその情報をできるだけ早くキャッチし、できるだけ正確に本社へインプットする使命があります。今後はその大きなタスクに力を注げるように、組織をさらに強化していく考えです。
――ところで、ドイツでの暮らしはいかがですか。
鈴木
楽しんでいます。夏は日が長いのがいいですね。
山田
ちょっと車を走らせれば国境という環境なので、旅行好きの方には打って付けでしょう。料理などさまざまな文化を体験し、さまざまな人種の方たちとふれあう機会があります。とても刺激があります。一例ですが、生の豚肉のミンチをパンに塗って食べる「メット」という料理は、驚きでした。
ドイツ語が話せれば、家族とプライベートを楽しむための情報を収集しやすく、さらに楽しいでしょうね。
――海外で働きたい学生の皆さんがやるべきことは何ですか。
山田
英語やドイツ語も重要ですが、それよりも自分の専門分野をしっかりと持つことでしょう。日本のことを説明する機会も多いので、自国の歴史や文化などに関する幅広い知識も大切です。
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