世界有数の二輪車市場が広がるインド。2020年の次期排ガス規制の導入などにより触媒への関心が高まっています。キャタラーは現地メーカーや日系メーカーへの二輪車用触媒の供給を担うため、また、将来の四輪車現地生産への対応も視野に、インド・カルナタカ州のバンガロールに生産拠点を設立しました。現地工場で生産を開始するためには、生産設備の仕様決定や日本国内での試運転、現地での据付・試運転など、数多くのステップを確実に踏んでいく必要があります。一連の準備や、現地スタッフ指導などで活躍したキャタラー社員たちの中には、若手技術者の姿もありました。
2009年に入社して以来、二輪車や汎用エンジン用触媒の生産技術を担当してきました。
メタル基材(金属のハニカム構造体)や、このメタル基材に触媒成分をコーティングする工程の設計や設備設計などです。
インドに生産拠点を設立するインドプロジェクトが始まる前から、キャタラーとして新しい市場でビジネスを拡大したいという思いは強く感じていました。それでも、まさか自分がインドプロジェクトに深く関わり、現地へ3ヶ月もの長期出張をすることになるとは、思っていませんでした。
インドプロジェクトで私が最初に取り組んだのは、お客様の「こういう触媒が欲しい」といった要求を受けた設備・工程の検討でした。この検討の中で、初めて生産設備の仕様書作成にチャレンジしました。数多くの設備メーカーと打ち合わせを重ねながら、仕様を練ることで、自分の理解が不足しているポイントや、さらに詰めなければならないところが明らかになり、勉強になりましたね。ここで理解を深められたことが、インド出張でも活きたと思います。
国内での生産設備の試運転も担当しました。各設備メーカーの近くに倉庫などを借り、そこに設備を仮組みして試運転をする毎日。設備メーカーまでの移動時間も長く、体力の求められる場面もありました。しかし、完成度をできる限り上げ、インドで不具合が出ないようにするための重要なステップでしたので、満足な結果が出るまで粘ることができました。
小型生産設備での触媒生産に必要な工程は、大量生産と基本は同じです。しかし、従来の大型設備の開発では生産性を重視していたのに対し、本プロジェクトでは小型化しろという号令が…。まったく前例がありません。どこから手を付けてよいか分からず、文献やインターネットで様々な技術を調べるところからスタートしました。
生産設備は、インドへ船便で送られた後、未舗装の区間もある陸路を旧型のトラックで運ばれ、現地工場へ。開梱すると、悪路の影響か、緩み止めの措置を施したボルトが外れているなど、国内では考えられないトラブルもありました。
インドでは、現地スタッフの教育が重要です。彼ら彼女らは、生産設備を実際に見るのも初めてで、まっさらな状態だからです。そのスタッフの習熟度を、工場が安定的に操業できるレベルまで引き上げる必要がありました。まずは、私たち日本人社員が試運転を行う様子を見てもらうところから開始。次の段階として1つひとつの機械操作を学んでもらいました。
「なぜ、日系企業で働こうと思ったの?」と、20代前半が中心の現地スタッフに尋ねたことがありました。答は、「安全だから」。スタッフの友人が、現地メーカーで作業中に事故に遭い、大怪我をした話も聞きました。日本とインドの労働環境の違いを思い知らされました。そんな環境の中で、強く希望して当社を選んだスタッフが多いためか、仕事に取り組む熱意にはすごいものがありました。
それでも、不良品を出してしまうことへの危機感など、ものづくりへの姿勢を伝えるのは一苦労。対策として、不良品が出たときには、スタッフを1カ所に集め、あえて普段とは雰囲気を変えたミーティングを行いました。例えば、1つのメタル基材に何度もコーティングしてしまうというミスがあったときなどです。
ミーティングを開くと、スタッフから、ミスの原因や再発防止に関する意見が次々と出され、ディスカッションが始まります。ミーティングの結果を踏まえ、こちらから指導を行なっても、素直に聞き入れて実践してくれます。
インドプロジェクトは、様々な生産設備の仕様決定から生産開始まで、大きな仕事を任せてもらい、“経験値”が大幅にアップしたと思います。また、プロジェクトを通して、私自身の視野が広くなったと感じます。周りがどのような仕事をしているのかをしっかりと把握した上で、自分がやろうとする仕事の意味についてしっかりと認識するようになりました。 これからは、より幅広い分野の知識を吸収し、もっと頼れる技術者を目指したいですね。そのために、新人のころと同じように、他部署へ積極的に出向き、わからないことを教えてもらう姿勢を守っていきます。
※掲載している内容はインタビュー当時のものであり、現在の状況とは異なっている場合があります。